【隠し通路】2:1台本 (約20分)

 

<キャスト>
管理人 犯人 必死 だけど 運が悪い
男   探偵 間抜け だけど 運が強い
女   刑事 ドジ だけど 感は鋭い

 


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管理人:
男:
女:
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【クローゼットの奥】

 

管理人 『もう少し・・・もう少しだ・・・ あと、もう少しで・・・
     ふっふっ 誰も気がつくまい。
     このクローゼットの奥にこ~んなものがあるとは。
     ふっふっふ はーはっはっはっはっはっは 
     ぬぐ、ごほっごほっごほっごほ、気管に唾が入っちゃった・・・』


●崩れる音


管理人 『むむ、地盤沈下!こりゃあ、大きく穴が空いてしまったなぁ。
     50Mくらいあるかなぁ、うぅ、絶対落ちたくないなぁ。
     十分に気をつけようっと』


●風


管理人 『うぉぉ、風がっ!
     あっ、クローゼットから服が~ っしょっと!!
     ナイスキャッチ、自分!
     あぁ!コートが~、、落ちていっちゃったぁ。
     まー仕方ないかぁ。そ・れ・よ・り、続きっと』

 

 

【街の中】


女   『一体何処なんだろう、銀行への隠し通路はー!
     あれ?ここどこだっけ?

     やぁ~ん、考え事してたら道に迷っちゃったぁ。
     あ、あの人は確か!』


男   『あっれー?携帯、部屋に忘れちゃったかなぁ』

 

●女が遠くから駆け寄ってくる


女   『あのー!』


男   『(小声で)うっわ!この前の刑事だ!

     仕方ない、ここはこの手で。』

    『はい?なんでしょう?』


女   『こんにちは!私の事、覚えてますよね!』


男   『え?いや、存じ上げません!』


女   『この前、同じ事件を追っていた、探偵さんですよね!』


男   『(しらじらしく)え?事件?なんのことです?』


女   『ほら、私、あの時の刑事です!覚えてません?』 

 
男   『いや、勘違いじゃないですか?』


女   『えー。ほんとに覚えてないんですか?うっそー。
     あ!もしかして、ここが例の場所なんですか』


男   『例の場所って?』


女   『隠し通路ですよ~!』


男   『ギクッ!!』


女   『銀行を狙っている奴が掘ってるっていう

    (口を押さえられる)』


男   (女の口を押さえながら)

    『だぁ~~~ストップ~~~~~!!』 


女   『(演技)うぐー うぐー くる・・しいぃ 

     う・・気が遠くなってきた・・・

     あぁ~~~、川の向こう岸で、おじいちゃんが手を振ってる~
     おじいちゃ~~ん、今からそっち行くねー。待っててね~~』


男   『その川、渡っちゃだめ~!』(慌てて手を離す)


女   『はぁ、はぁ。

     酷っ~い!

     息出来なくするし、おじいちゃんと会わせてくれないし!』


男   『・・・はぁ~、わっかりましたよっ!

     実は、この近くに例の犯人が潜伏してるって噂なんですよ。
     ただ、特定できなくて困ってるんです。』


女   『やったね!教えてくれてありがとう~』


男   『でもここは残念ながら、ぼ・く・の!部屋ですから!』


女   『とかなんとか言っちゃって~。
     ははぁ~ん、一見、普通の部屋に見せかけて~~、
     じ・つ・は、

     この汚~い部屋が、隠し通路の入り口になってるのね!』


男   『違いますって!!』


女   『ふ~~ん、あっそ。
     ま、確かにこの汚さでは、誰も発見できないわね~』


男   『汚い、汚いって、見たことないでしょ!!』


女   『そうだ!アジトは見つけたけど、ホシがいない。
     そこで、帰ってくるのを待ってるってとこなのね!!』


男   『だ・か・ら、違いますって!
     ここは僕の部屋で、隠し通路なんてものはありません!』


女   『じゃあ、何でとぼけたんですか!!』


男   『そ、それは・・・僕が探偵だからです。

     警察に先に見つけられちゃうと、
     依頼金が貰えなくなるんですよぉ・・・』


女   『ふ~ん。なーんだぁ、あなたの部屋だったのねぇ
     どおりで汚っ、、素敵なお部屋だと思いましたわ!おほほほ』


男   『まったく・・・。』

 

女   『でも、ほら、なんていうかなぁ~、勘ってやつ!?

     ものすご~く、ここだ!!って感じがしたのよ!』


男   『刑事の勘、ってやつですか。
     でも、ここには隠し通路なんてありませんから!
     それより、僕は携帯電話を取りに戻って、
     もう一度、このあたりを探しに出ますので。
     あ、そうそう

    (ひそひそと)犯行は今夜あたりって話なんです。』


女   『え?今夜?』


男   『はい。だから邪魔しないでくださいよ!』


女   『えーー!!じゃあ私も探さないと!情報ください!』


男   『そんな事言われても、こっちだって貴重な情報、
     体張って集めたんですから・・・』


女   『(嘘泣き)うっ・・なんて人!

     情報が欲しけりゃ、お金って事!?
     で、お金がなきゃ、
    (大声で)体で払え!!ってことですかーー!』


男   『ちょっと!
     ご近所さんが勘違いするから大声で言わないでくださいよ!
     まいったなぁ・・・。
     あの、ちょっとそこ、どいてください。部屋に入るので。』


●ドアあかない


男   『あれ?チェーンがかかってる』


管理人 『留守でーす』(遠くのほうで)


男   『その声は・・管理人さん!?!?また、勝手に。

    (大声で)人の部屋で何してるんですか!』


管理人 『ナ・イ・ショーー』(遠くのほうで)


男   『ないしょって…
     ちょっと!チェーン掛けてないで、開けてください!!』


管理人 『そんな急かさないで。上がるの苦労するんだから』

    (段々近ずく)


男   『あがる?』


●ドアあく


管理人 『はい、おかえりなさ~い。今日は早かったね~』


男   『もう!いっつも、ひとの留守にあがりこんで!
     てか、なんですかその恰好は!

     土木作業員みたいじゃないですか!』


女   『あの~そちらの方は?』


男   『ああ。管理人さんです。
     な・ぜ・か、僕の留守中に部屋にあがっちゃうんですよ』


女   『管理人さん、こんにちは!!
     そっかぁ、私を帰そうとしたのは、
     (わざとらしく大きな声で)彼がいたからなのね!!』


男   『ちょっと!!』


管理人 『な、なな何を言っちょるんだね!ちみ(君)は!!

     ところでそこのべっぴんさんは、どうしてここに?』


女   『実は道に迷ってしまって。

     彼に助けてもらおうとしたら、この汚くて臭~い部屋に

     連れてこられだんですぅ。
     例の犯人の隠し通路があるって言うし』


男   『言ってなーい!貴女が何となく感じただけでしょ!!』


女   『そうだっけ?』


管理人 『そ、そんなわけ~、あるわけ~、ないじゃないかぁ(苦笑い)
     この汚くて~、臭くて~、
     彼女居な~い暦 30年の彼の部屋に、
     隠し通路な~んてものが、あるわけ、ないでしょ~~!!』


男   『ぅ、、その通りだけど』


管理人 『まぁしかし、彼女居ない暦卒業ってか!!
     べっぴんさん!さ、さ、上がって上がって。
     せっかく来たんだ、丁度、お湯も沸いてるから、
     お茶でも飲んで行かんかぇ』


女   『ありがとうございます!じゃあ、お言葉にあ・ま・え・て。
     失礼しまーす!』


●やかんが沸騰する


男   『もー!彼女じゃないし!!それに、ここ僕んちでしょ!!
     はぁ~もう、何やってるんですか。ったく・・・。
     おっと。それより、携帯、携帯・・どこだったかなぁ。
     あ!!昨日着てたコートの中だ!! 

     えっと・・クローゼット・・』


管理人 『ク・クローゼット!!!? おわっと!!それはまずい!』


男   『え?まずい?』


管理人 『あーいやいや。なんでもないよー。
     携帯電話なら、私が取ってきてあげるよ!
     君は~あのーなんだ、彼女にお茶でもだしてあげなさい!ね!
     ほら!お湯が噴いてるよ~~』


男   『だから、彼女じゃないって!!っあー!火、止めなきゃ!
     じゃあ、携帯、急いでお願いしますね!』


管理人 『おー!わかったー。任せといて~!』


男   『胸の内ポケットですから!!』


管理人 『あいよーー』


男   『あ、管理人さん。』


管理人 『(遠い感じ)なんじゃー?』


男   『チャックが壊れてるでしょ?』


管理人 『(遠い感じ)えー?ちょっと聞えにくいなー。』


男   『壊れてるでしょー!!!!』


管理人 『(遠い感じ)あー、うん。そうだね~ 
     今日の崩落で、結構壊れてるね~』


男   (かぶせるように)

    『かたいので、力任せにいっちゃって下さい』


管理人 『(遠い感じ)あーだめだよ!
     固いからこそ、ここは足場をちゃーんと確認して、

     慎重に降りないっと!!』


男   『え?足場?降りる?』


管理人 『(遠い感じ)うん、そう!
     すご~く滑るし、あ、ほら、事故が起きたら、
     取り返しがつかない場所だからぁ!』


男   『滑る?事故? 何かすっごく、声、遠くないですか?』


管理人 『(大声で、遠い感じ)いや、そんな事ないよ~~』


女   『あ!滑る、で思い出したけど、
     滑りやすいところって、踵から歩くと良いんですってね~!』


管理人 『(遠い感じ)ふむふむ、、踵からか・・・よし!』


女   『あ、間違えた!つま先だったぁ~ てへ!』


管理人 『(遠い感じ)え、ここでその間違いは致命的!
     しまったぁぁ!!あぁ~~~~~~~』


●崩れる音


男   『管理人さーん!? どうしました??
     すっごい音が聞こえましたけど?』


女   『それに悲鳴が聞こえた気が・・気のせい、ね、きっと!
     あの~探偵さん。携帯持って、すぐ調査に行くんですか?』


男   『もちろんですよ』


女   『(目で訴える感じで)情報・・・』


男   『な・なんですか。情報欲しいんですか?なぜそこまで。

     今回の事件に、何か特別な事情があるんですか?』


女   『はい。実は・・・』


管理人 『(かぶり気味に)(段々近くに)ふぅふぅ、、、

     あ、ほれ、携帯電話!』


男   『ありがとうございます!結構、かたかったでしょ?』


管理人 『あぁ、そりゃ硬いよ、岩だもの。
     (切実な感じ)さっきは、もう本当に駄目かと思ったよ~
     でも、偶然、軟らかい場所に落ちたおかげで
     (涙ぐむ)わし・・・生きてるぅ』


男   『何、わけわからない事を言ってるん・・・ 
     っうわっ!!泥だらけじゃないですか!どうしたんです?』


管理人 『本当に、奇跡だった・・・』(うわの空で)


男   『ま、まぁ、とにかく、ありがとうございます。

     あ、で、刑事さん!何か、事情があるんですか?』


管理人 『(小声で)なに!?け、刑事!?・・・はて・・
     何処かで見たような・・・はっ!!』


女   『実は・・・今回のホシ、

     昔、私がドジ踏んで逃がしちゃった犯人なんです・・・

     だから、今度こそ捕まえたくて』


男   『そうだったんですか』


管理人 『やっぱり、もうバレてるのか?』(小声)  

 
男   『わかりました。協力しましょう』


女   『ありがとうございます!!!やったー!!』


管理人 『ところで、べっぴんさん』


女   『はい』


管理人 『何故、ここに隠し通路がありそうだと感じたんかなぁ?』


女   『え?いや何となくかなぁ。刑事の勘かしら』


管理人 『え?勘?』


女   『はい。あ、でも、勘違いだったみたいです。
     あはは、勘で当たったら、ビックリですよね~!』


管理人 『あ・あたり前だっ!かん違いに決まってる!
     何となくで当てられちゃあ、

     こっちは、たまったもんじゃあ、ないんだよぉー!!』


男・女 『え?』


管理人 『ったくよぉ~刑事の第六感とか、

     ホーントありえないよなぁー』


女   『は、はぁ』


男   『あ、刑事さん、

     情報屋を紹介するから、行ってみたらいいよ。』


女   『ありがとうございます!』


男   『えーっと、確か財布の中に名刺があったよなぁ
     あれ?財布?財布が無い。あ!クローゼットのコートの中だ』


管理人 『え? 財布も入ってたのぉ』


男   『えぇ。深めのポケットにいれたから、すっかり忘れてました。

     ちょっと取ってきます』


管理人 『あぁぁぁー。ちょっと待った!!私が!取ってくるよ!!』


男   『いや、でも。泥だらけだし・・・』


管理人 『大丈夫!ほれほれ、もう行かないと間に合わないだろ?
     出かける準備、して!!』


男   『はい。なんか・・・すみません』


管理人 『(覚悟を決めた感じで)よし。では行ってくる』


男   『あ、管理人さん!

     コートの右ポケットなんですけど、ポケット破れてて、

     かなり奥にありますから!』


管理人 (すごく遠い感じ)『ああー。 すっごい奥だねー。』


男   『結構、深くていつも苦労するんですよ~』


管理人 『(遠い感じ)うん!!そうだね~!!すっごく深いよー。
     にしても、いやぁ、これ滑ったら一巻の終わりだよ』


男   『多少は破れても構いませんから、

     強引に突っ込んじゃって下さい』


管理人 『(遠い感じ)いやいやいやいや~~、

     ここは慎重に行かないと!!
     なんたって、つい先ほど不幸な事故が起きた
     現場なんだから~ よっし、今度は命綱で慎重にっと。』


男   『綱?』


女   『綱といえば~』


管理人 『(小声で)さっき、あいつの言うこときいて、
     酷いことになったんだ。もう信用せんぞ~』


女   『今年の冬も、寒いらしいですね!』


管理人 『(遠い感じ)縄、関係なーーーーい!
     あ、しまったーー!あぁ~~~~~~~』


●崩れる音


男   『管理人さん、どうしました?
     財布、ありました?ちょっと急いでくださいね!』


女   『探偵さん、その情報屋さんの場所ってこの近くですか?』


男   『ちょっと遠いかなぁ。』


女   『そっかぁ。う~ん、、犯人はこの近くなのになぁ。』


男   『犯人が動いたら・・う~ん。』


管理人 『(遠い感じ)いやぁ~、その心配はないんじゃ無いかな~。

     ほら、犯人も突然怪我して~治療!!! 
     な~んて事があるかもしれないしの~~』
    『(段々近くに)ふぅ~ふぅ~、ほれ!財布!』


男   『あ、ありがとうございます
     うわ、すっごい鼻血!!どうしたんですか?』


管理人 (涙ぐむ)

    『今回のは本当に危なかった・・・ほら、なんていうのかなぁ。
     時間がゆっくり流れて、子供の頃の記憶とか、
     楽しかった思い出とかいっぱい浮かんできたんだ。(切実に)
     あー、もうすぐ岩盤だぁって時に、

     運よく命綱が足に絡まって・・・
     ギリギリ鼻をぶつけただけで済んだんだよ~~

     本当に良かったよ~~』

 
男   『は、はぁそうですか・・・』


管理人 『神様・・・わし頑張ったよね・・・』

    (見上げながらうつろな感じで)


女   『管理人さん、大丈夫ですかぁ?
     とにかく私、情報屋さんのとこに行ってみます!

     名刺、ください!!』


男   『あ、そうだったね。 はい、名刺。』


女   『この住所・・・ちょっと遠いなぁ。。
     もう一息!のような感じがするのになぁ。』


男   『うーん、、じゃあ、車で一緒に行こうか!!』


女   『え?良いんですか?』


管理人 『二人とも出かけるの?』


男   『もう一息!って感じなんでしょ?乗りかかった船だ!

     一緒に行こう!』


女   『ありがとうございます!!』


管理人 『ありがとう~~~~!』


男   『あれ?車の鍵が・・・無い。

     あ、ま~た、コートのポケットか…』


管理人 『コート!!クローゼットだね~~!!よし!!取ってくる~
     ま~かせとけ~~~~ぇ』(段々遠くに)


男   『あ、柱にかけたんだった。 鍵、ありましたー!!』


管理人 『(遠い感じ、喜ぶ感じで)え?あった!』


男   『なんでここに綱が結んであるんだろ…』


女   『あ、その結び方!端っこを引っ張ると、
     簡単に解けちゃうんですよね~。ほら!』


管理人 『(落ちていく感じ)No~~~~~~』


男   『じゃあ、行ってきまーす!』


●ドッシーン 着地音


管理人 『(瀕死状態)たぶん、いや、きっと、

     今夜は、な~んにも起こらないと思うよ~』

 

-end-